交通事故 請求できる損害

請求できる損害

交通事故に遭った場合、加害者に請求できる損害には、以下の損害があります。分かりやすくするため、積極損害と消極損害に分けます。

(1)積極損害

ア 治療費
イ 付添看護費
ウ 介護費(後遺障害が発生した場合)
エ 入院雑費
オ 入通院交通費
カ 葬儀費用

(2)消極損害

ア 休業損害
イ 逸失利益

(3)慰謝料

ア 入通院慰謝料
イ 後遺症慰謝料
ウ 死亡慰謝料

(4)物損

(5)弁護士費用

上記について、具体的に幾ら請求できるのかについて、以下、具体的に述べます。なお、請求額を決めるにあたっては、複数の基準がありますが、ここでは代表的な基準として、自賠責基準と赤本基準を示します。自賠責基準とは、自動車損害賠償保障法に定められている自動車損害賠償責任保険の保険金等の支払基準のことを言います。この基準は被害者救済の観点から定められた最低限の基準ですので、同基準で補償されない部分は、任意保険で請求していくことになります。赤本基準とは、日弁連交通事故相談センター東京支部が出している「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」のことを言います。この基準は、過去の事例などを踏まえて弁護士会が算出した基準で、弁護士が交渉する際には同基準を元に交渉することが多いです。

(1)積極損害

ア 治療費

自賠責 必要かつ妥当な額
赤本 実費

イ 付添看護費

自賠責 入院付添費 12歳以下の子供の場合:4100円〜/日
通院付添費 職業付添人:必要かつ妥当な額 
近親者:2050円〜/日
赤本 入院付添費 職業付添人:実費
近親者:6500円〜/日
通院付添費 職業付添人:実費
近親者:3300円〜/日

ウ 介護費(後遺障害が発生した場合)

自賠責
赤本 職業付添人:実費
近親者:8000円〜/日

等級・介護の程度により増減有

エ 入院雑費

自賠責 1100円/日
赤本 1500円/日

オ 入通院交通費

自賠責 必要かつ妥当な額
赤本 原則実費。タクシー代は特段の場合

カ 葬儀費用

自賠責 60万円
赤本 150万円

(2)消極損害

ア 休業損害

自賠責 5700円/日
赤本 1日の基礎収入×休業日数(給与所得者)(自営業者(現実の収入減がある場合)、主婦(賃金センサス・全年齢平均賃金or年齢別平均賃金)、無職(原則不可。cf就業先が決まっていた場合等)、学生(アルバイト等している場合))

イ 逸失利益

逸失利益とは将来得べかりし利益のことを言います。具体的には、交通事故に遭い後遺障害が残った場合、本来交通事故に遭わなければこれまで通り仕事をして収入を得られたにもかかわらず、交通事故にあったため、仕事を変えざるを得ず収入も減ってしまうことが多いです。この場合の収入の減少分を填補するのが逸失利益です。交通事故に遭い、亡くなった場合にも同様の問題が生じます。以下、後遺症が残った場合と死亡した場合とで分けて論じます。

(ア)後遺症の場合

後遺症が残った場合の逸失利益の算出方法は、まず、@本人の基礎収入を算定し、次に、A後遺症の等級に応じた労働能力喪失率を出し、最後に、B就労可能年数に対応するライプニッツ係数を出したうえで、これら@〜Bを全てかけ合わせて、金額を算出します。計算式で表すと以下になります。

自賠責 実年収or年齢別平均給与額×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
赤本 実年収or年齢別平均給与額×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

(イ)死亡の場合

死亡した場合の逸失利益の算出方法は、まず、@本人の基礎収入を算定し、次に、A本人の属性に応じて、生活費割合を出し、最後に、B就労可能年数に対応するライプニッツ係数を出したうえで、これら@〜Bを全てかけ合わせて、金額を算出します。計算式で表すと以下になります。

自賠責 実年収or年齢別平均給与額×(1−生活費割合)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
赤本 実年収or年齢別平均給与額×(1−生活費割合)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

生活費割合については、以下の割合となっております。ア)一家の支柱(被扶養者1人)40%、イ)(被扶養者2人)30%、ウ)女子(主婦、独身等)30%、エ)男子(独身等)50%。

(3)慰謝料

ア 入通院慰謝料

自賠責 4200円/1日
赤本 19万円〜 (詳細は以下の表)

注:@原則として、別表Tを使用するが、むち打ち症で他覚症状がない場合は別表Uを使用する。A通院が長期にわたり、かつ不規則である場合には、実日数の3.5倍程度を通院期間の目安とすることがある。

別表T(単位:万円)

  入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 A/B 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346  
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344    
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341      
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338        
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335          
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332            
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326              
13月 158 187 213 238 262 282 300 316                
14月 162 189 215 240 264 284 302                  
15月 164 191 217 242 266 286                    

表の見方

  1. 入院のみの場合は、入院期間に該当する額(例えば入院3ヶ月で完治した場合は145万円となる。)
  2. 通院のみの場合は、通院期間に該当する額(例えば通院3ヶ月で完治した場合は73万円となる。)
  3. 入院後に通院があった場合は、該当する月数が交差するところの額(例えば入院3ヶ月、通院3ヶ月の場合は188万円となる。)
  4. この表に記載された範囲を超えて治療が必要であった場合は、入・通院期間1月につき、それぞれ15月の基準額から14月の基準額を引いた金額を加算した金額を基準額とする。例えば別表1の16月の入院慰謝料額は340万円+(340万円−334万円)=346万円となる。

別表U(未反映)(単位:万円)

  入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 A/B 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229  
7月 97 119* 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225    
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219      
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214        
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209          
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204            
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200              
13月 120 137 152 162 173 181 189 195                
14月 121 138 153 163 174 182 190                  
15月 122 139 154 164 175 183                    

イ 後遺症慰謝料

自賠責 32万円〜1600万円 (詳細は以下の表)

自動車損害賠償保障法施行令別表第1の場合

第1級 第2級
1,600万円 1,163万円

自動車損害賠償保障法施行令別表第2の場合

第1級 第2級 第3級 第4級
1,100万円 958万円 829万円 712万円
第5級 第6級 第7級 第8級
599万円 498万円 409万円 324万円
第9級 第10級 第11級 第12級
245万円 187万円 135万円 93万円
第13級 第14級    
57万円 32万円    
赤本 110万円〜2800万円 (詳細は以下の表)
第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級  
2,800万円 2,370万円 1,990万円 1,670万円 1,400万円 1,180万円 1,000万円  
第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級 無等級
830万円 690万円 550万円 420万円 290万円 180万円 110万円 ×

ウ 死亡慰謝料

自賠責 900万円〜1300万円 (本人の慰謝料350万円+遺族の慰謝料550万円(1人)〜750万円(3人以上)+被扶養者加算200万円)
赤本 2800万円(支柱)、2400万円(母親・配偶者)、2000万円〜2200万円(その他)

(4)物損

自賠責
赤本 相当な範囲

(5)弁護士費用

自賠責
赤本 損害額の10%程度
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